Q&A

2025.12.24

【Q&A】018 遺言で病院経営の貢献に報いたい

Q

私の後継者となる長男は私とともに長年医療法人のために尽力してくれ、私の個人財産の形成にもとても貢献してくれました。この長男の貢献を遺言に書いて、将来の相続の時に長男がたくさん遺産をもらえるようにしたい。どのように遺言を残したらよいですか。

 

 

 

A

相続財産の維持や増加に特別の寄与(貢献)があった場合にはこれを「寄与分」としてその貢献度に応じて本来の相続分に加算して相続分を算定する制度があります(民法第904条の2)。

この制度を活用して、遺言に「長男に寄与分を認める」と記載する方法もあります。

 

ただ、この方法は思わぬ落とし穴があり、あまりお勧めしません。

というのも、遺言に「寄与分」とだけ書いても、具体的な金額が決まるわけではありませんし、仮に金額を指定してもそれ自体に法的な拘束力はありません。寄与分は、共同相続人の協議や家庭裁判所の審判・調停で最終的に定められるものだからです。後日、遺産分割協議で理解のない他の相続人から「そんな貢献は認めない」「親子には互いに助け合う扶養義務(民法877条)があるだろう」「医療法人から相当額給与をもらっていたでしょう」と言われると、調停や審判に発展し、長男様がかえって苦労することになります。

 

ではどうしたらよいのでしょうか。

結論を申しますと「具体的な財産配分」で差をつける方法がベターです。

 

➤「財産そのもの」を多く渡すことを記載する

ご長男の貢献に報いる最も確実な方法は、遺言書の中で具体的に多くの財産(出資持分や不動産、預貯金など)を「相続させる」と指定することです。

その上で、「付言事項(ふげんじこう)」というメッセージ欄を活用し、なぜ長男に多く渡すのか、その理由(貢献の事実)を記します。これには法的拘束力はありませんが、他の相続人の納得感を得て、争いを防ぐ心理的な効果が非常に高いです。

 

 【遺言書の記載イメージ】

第〇条(財産の指定) 遺言者は、遺言者の有する医療法人〇〇の出資持分のすべて、および自宅不動産及び〇〇を、長男〇〇〇〇に相続させる。 (※ここで、貢献分を上乗せした配分を確定させます)

付言事項(他の相続人の理解を求めるメッセージ) 長男〇〇は、長年にわたり私と共に医療法人〇〇の経営に尽力し、私の財産形成にも多大な貢献をしてくれました。その労に報いるため、また今後も法人の経営を安定して継続してもらうため、長男に多くの財産を相続させることとしました。妻や子どもたちは、私のこの遺志を理解し、兄弟仲良く暮らしてくれることを切に望みます。

 

 

➤絶対に注意すべき「遺留分」

ここで一つだけ、非常に重要な注意点があります。それは他の相続人の「遺留分(最低限の遺産取得分)」です。 いくら長男様に全財産を渡したくても、他の相続人の遺留分を侵害すると、死後に「遺留分侵害額請求」という金銭トラブルに発展します。確実性を期すなら、遺留分を侵害しない範囲で配分を調整する対策が必要です。

 

このように医療法人の将来の経営の安定を考慮したり、相続人間の遺産形成への貢献度を考慮した相続を実現するために遺言の果たす役割は大きいです。ただ、遺言の規定の仕方や財産分配のバランスを間違えるとかえって将来の相続人間の争いを引き起こしてしまいます。

「貢献度をどの程度金額に反映させるか」「遺留分トラブルをどう防ぐか」という法務と税務が複雑に絡み合う難問を解決しつつ、遺言者の遺志を実現して上手な遺言を作成するには専門家の助言支援が必要です。

遺言に関するご相談は弁護士法人海星事務所までお声がけください。